結果を残す選手の3つのポイント
どんな状況でも結果を残せる選手は何が違うのでしょうか。さまざまな要因がありますが、あえて挙げるなら、3つのポイントがあると思います。まず「どんな状況でもプラスに捉えられること」。次に「自分にチャレンジできること」。最後に「指導者や周囲の環境をうまく使うこと」です。
ここでいうプラス思考は、「都合の悪い内容には目をつぶり、いい内容だけをフォーカスする」「何でも自分に都合よく捉える」というよりは、第三者の目線を持って、次の成長につながるような課題を見つける合理的な思考を指します。
悪い結果が出た時に最も避けたいのは、投げやりになること。結果が悪かったとしても、1〜2割は良い要素があるはずです。「今日はこういう結果に終わったが、この部分はうまくできた」など、解説者になったような第三者の目線で自分を分析する。そこから得られる気づきこそ、成長の種になります。そして、同じ失敗を繰り返さないためには、何を重点的に練習すればよいのかに目線を向ける。「くよくよしない!ポジティブシンキングで行こう!」などと気持ちだけ前向きな姿勢を取るよりは、ずっと建設的です。客観的に自己分析するためには、自分との対話が必要。対話を重ねるうちに、"自分を信じる力"が磨かれます。
ちなみに、結果が悪かった時だけでなく、実は良かった時にこそ、悪い点を見つけてきちんと反省し、次の課題につなげられる選手は強いと感じます。私自身も結果の良し悪しに関わらず、レース分析をして良かった点、悪かった点を明確にし、次への課題や選手のデータとしてインプットします。これが後から振り返った時に、スランプからの脱却や調整、戦術のヒントになることは少なくありません。
次に「自分にチャレンジできる」とは、どんな環境でも、相手がどのような選手でも、常に自分と戦える選手を指します。どのような練習メニューでも、その意味を見出し、力を出し切るように全力で取り組む。例えば、萩野公介選手はまさしく、練習中から自分に戦いを挑み、追い込んでいきます。「自分の力を出し切る」ようにチャレンジしているのです。ですから、いつどんな時も言い訳をしない。言葉で言うのは簡単ですが、自分に勝つのは容易いことではありません。でも、世界で戦うには必要な志です。
3つ目の「指導者や周囲をうまく使うこと」ですが、結果を出す選手ほど、独りよがりな言動がなく、指導者をやる気にさせたり、周りがサポートしたくなるような態度を見せます。やる気を起させるのは指導者だけの役目ではありません。選手も指導者や周りを巻き込むぐらいの姿勢で挑まないと、いい循環は生まれない。「コーチやトレーナー、両親は、本当に僕や私のことを思っていろいろ走り回ってくれる」。そのような本心が垣間みられると、サポートする側も「もっとこの選手のために考えよう」という気持ちが強まります。
「挨拶は中途半端」「御礼も言わない」「嫌なことはすぐ顔に出す」「言い訳ばかり」。誰だってこのような選手のサポートには力が入りません。選手も指導者もお互い人間ですから感情があります。良い意味で"使い使われるような関係"になる。そこから成長しやすい環境が生まれるのではないかと思うのです。